Jun's Light

Jun’s Light | the beauty of transience

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2021.11.2東京・舞台芸術学院での上演を終えて

10月31日は、東京池袋にある、舞台芸術学院にて、朗読「銀河鉄道の夜」上演の日でした。
前日は仕込みがありましたので、初めて、舞芸の扉を開けた時から、生徒さん達とすれ違うと、一人一人が笑顔で大きな声でしっかりとご挨拶をしてくださったのが、とても印象的でした。

この作品を、公演のたびに、新しい芸術性が生まれる創造の旅へと導いてくれる、演出家の鵜山仁さんが学長を務められる舞台芸術学院は、鵜山さんを含め数々の舞台芸術家達を輩出してきている、70年以上の歴史のある学校です。設立されてから、ずっと同じ場所で、時代と共に文化芸術の学び舎となっています。鵜山さん曰く、「僕が学生だった頃は、この辺りは焼け野原みたいに、何にもなかったんです」だったそうです。

そして、上演の日。
キラキラと目を輝かせて、生徒さん達が次々に劇場入りしました。若いエネルギーは、きっと演者の栗田桃子さんへも届いていたと思います。銀河の旅は、どんどん広がって行きました。

今回、加わった新しい背景のワックスアートは、物語終盤の銀河に見えてくる「石炭袋」「空の孔」です。ジョバンニとカンパネルラが見たその黒い吸い込まれそうなモヤモヤとした黒い存在は、ブラックホールではなく、実は星が生まれている場所と考えられています。そのシーンのすぐ後に、ジョバンニはカンパネルラとの別れに気づくという、本当に胸が張り裂けそうな気持ちにもなるシーンとなるのです。でも、どこかで、この石炭袋と空の孔は、喪失感だけではないような、巡りめぐってそのさきに光が見えてくるような、そんな象徴にも思えてきます。
上演するたびに、私自身の中でも、この物語を通して見えてくるものが違ってきたり、新しく生まれる感情があったりと、「未完」である「銀河鉄道の夜」は、ますます魅力的に映ってきます。

上演後は、生徒さん達からの質疑応答の授業となりました。舞台には、女優の栗田さんと演出家の鵜山さんが上がり、日常的で実践的なものから哲学的な質問まで、楽しく、丁寧に答えていました。来年2月に、1年生が「銀河鉄道の夜」の草稿劇をすることもあって、作品に対する具体的な質問も多く寄せられました。

印象的だったのは、鵜山さんが、演出家として、自分が考える以上のことがバーンっと役者さんから出てきたときのことを喋っている中で、栗田さんは、役者として演出家から言われる以上のものを絶対に目指して行く、という心構えで、いつもお稽古や舞台に立つ、と言っていました。「慣れ」というものを一切つくらずに、頼ることなく、一つ一つ、これ以上できないと思うあのピリピリ感というか、全身全霊を込めたエネルギーの先に、やり遂げた後に感じる、やっと緩めることができる心地よさ…、だからこそ、日々の生活での態度や人間関係を意識しなが過ごす…うまく言葉に出てきませんが、それは、何歳であったとしても、プロとしてチャレンジをし続けることの意味を、改めて教えてくれたと思いました。

舞台芸術学院の皆様、素晴らしい機会をいただき、本当にありがとうございました。
生徒さんお一人お一人が目標に向かって、羽ばたいていかれることを、心から応援しています。

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