Jun's Light

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2025.7.26旅の記憶 #10

ウィーンでの今回の一番の目的は、グスタフ・クリムトが1897年に他の芸術家と共にそれまで所属していた保守的な美術家協会を脱退し、新たな芸術家団体「分離派」を立ち上げ、翌年その象徴ともなる建築物「セセッシオン(分離派会館)」を訪れることでした。

通称「金のキャベツ」と呼ばれている月桂樹の葉の球の形をした装飾は、とてもシンボリックで、なんだか魔法にかかったかのように、その場所からいつまでも離れたくない気持ちになりました。

入り口にある、ラピスラズリ色のモザイクの植木鉢、そして3人のメデューサたちが迎えてくれました。

分離派会館のハイライト、クリムトが制作した「ベートーヴェン・フリーズ」。壁一面に描かれたこの作品は、長さが34mもある大作。1902年のベートーヴェンの展覧会のためにクリムトが手掛けました。これは、ベートーヴェン交響曲第九番を視覚的に解釈・表現したものでした。

地下には、一人だけ学芸員のお爺さんが立っていて、私にヘッドホンを渡して手振りでどうやって鑑賞したらいいかを教えてくださいました。壁をゆっくりと巡りながら、ヘッドホンから流れてくる臨場感あふれるベートーヴェンの第九。クリムトが描こうとしていたテーマ。壁画を観ると涙が止まらなくなってしまったので、中央にあるベンチにしばらく座って下を向いて目を瞑っていました。そのまま約1時間はいたでしょうか。最後に学芸員にヘッドホンを手渡して階段を上がりました。

音楽と絵画の究極のコラボレーション。
時代を経て、クリムトの精神が宿っている分離派会館。
また必ず訪れたいです。

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