ウィーンのホテルに到着してから、まずは一息。
新しいホテルでしたが、コンセプトが”Earthbound Design”のインテリアは、サンドカラー(砂)と有機物の曲線をなるべく天然の素材で表現して、ミニマリスティックに構成されていました。全てが絶妙に主張しない創りで、とっても心身に優しく馴染む環境に、旅の疲れを芯から癒してくれました。異国で初めての感覚。
できればずっとあと1週間くらいこのホテルにいれたら最高なのに。。。と思いながら、今日中に予約していた美術史美術館へ行く準備にかかりました。ホテルはちょうどミュージアム・クウォーターと呼ばれる美術館地区にあるため、レオポルド美術館、自然史博物館、近代美術館が立ち並ぶ界隈で、市民の文化的な憩いの場でもあるので、それだけでもう何日も滞在できる場所でした。
美術史美術館。古代〜19世紀までのヨーロッパ各地の美術品を収蔵する壮大な建物に息を飲みました。
来場者を出迎える階段上の壁画は、グスタフ・クリムトが担当したもの。今回の旅の大きな目的の一つ。
キャンバスの上だけではない、建築物の装飾美を創り出す芸術家として関わっていたクリムトの作品を観れたのは圧巻でした。どこか、エキゾチックさもあり、従来の伝統的な枠から更なる昇華を目指しているような、まさに分離派を率いたクリムトのエッセンスを醸し出していました。
美術史美術館は、ブリューゲル一族の作品を多く収蔵していることでも知られています。これはその中でも世界的に有名なピーテル・ブリューゲル1世の傑作「バベルの塔」。その他、「雪中の狩人」をはじめとするたくさんの作品が展示されていて、札幌芸術の森美術館で、2018年にブリューゲル展の展覧会の灯りを制作した時のことを思い出しながら、深い色使いと詳細な人物像の感情表現に見惚れていました。
こちらはフェルメール。光の取り込みと全てのものの質感。なんて美しいのでしょう。
数少ないフェルメールの作品は、思ったよりも大きくて、ゆったりとした静かな空間にさりげなく飾られていました。
観覧の列もなく、来場者たちが譲り合いながらゆっくりと絵を鑑賞する空気がとても心地よかったです。
ホテルに戻ると、バルコニーから見えたのはサンセットの空とウィーンの街。
照明を付けずにいたお部屋は、気づけば天窓から月あかりに照らされた空間に変わっていました。
静かに流れる独りの時間。
つづく