久しぶりの「旅の記憶」の更新です。
この一ヶ月間、上京からロングラン個展のオープニング、クリスマス展とノンストップで製作があったので、なかなか落ち着いてゆっくりと書くことができませんでした。でも、その分皆さまと会場でお会いしたり、メッセージをいただく中で、「旅の記憶楽しみに読んでいます♪」とそっと教えてくださる方が多くて、本当に嬉しかったです。今では半年以上前の旅のことを振り返っていることを「一緒に旅をしているみたいだ」と言ってくださるのを聞くと、また旅での思い出がどんどん浮かんできて、自分の直感をこうして皆さまと共有できていることに幸せを感じています。またこれから時折お付き合いくださいましたら嬉しいです。

先日、5月にNYでお世話になったフランクがNYCの5番街の写真を送ってくれました。クリスマス前の最後のウィークエンドだったので、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーも5番街のサックスフィフスアベニューのデコレーションも活気に満ち溢れているようでした。


さて、遡って旅の記憶の続きは、もうすぐ私のキャンドルメイキングの師匠に会えるところで終わっていたと思います。
せっかくNYCのクリスマスの写真をアップしているので、今日のところは5月のNYCのエピソードにしてみようと思います。

今回ホストになってくれていた滞在先のフランクのお家は、NYCまでは電車で約1時間20分かかります。メトロノーストレインといって、ハドソン川に沿ってシティーから北に向かうとても便利なルートで、主に通勤通学に使っている人も多く見受けられました。当日は快晴。ラッシュ時よりもオフピーク時の方が乗車券も安いとか、面白いシステムになっていました。週末になると各駅の駐車場が無料となったりもして、州民がおでかけしやすくなっているインフラも印象的でした。

列車は終着駅のグランドセントラル駅に到着。映画で観るのと変わらないスケールで、でも思ったよりも静かでNYCに降り立った感じは「マイルド」という言葉がぴったりでした。

中央駅から五番街方面へ。私の建物好きを知っているフランクは、まずニューヨークのアールデコが満喫できるロックフェラーセンターに連れて行ってくれました。直線と曲線、そして高さが半端ないスケールで、建物がこんなに街の空気を一変させる力があり、緻密に計算されたフォルムとディテールをみると、教科書や写真の上では把握できない迫力にすでに圧倒されていました。

80年代には何かというとこの風景が放送されていたRadio City。


聖パトリック教会。ロックフェラーセンターのそばにいることを忘れるくらい、静かな荘厳な世界がありました。



私は、教会で合唱団の歌声を聞くのが若い時から本当に好きで、もしかしたら何かやっているかもしれないと、イギリス国教会でもある聖トーマス教会にも行ってきました。こちらはカトリックの聖パトリック教会とは雰囲気が全く違って、ダークなマホガニーの中に鮮やかでシックなブルーのステンドグラスが美しい場所でした。残念ながらその日はイベントはなかったのですが、大好きな作曲家のVaugan Williamsの直筆の教会宛のお手紙や、歴史と音楽にまつわるものがたくさん展示されていて、ゆっくりと過ごすことができました。クリスマスの時には特別に少年合唱団がクリスマスキャロルを歌うそうです。


教会を出て上を見上げると、これはどう理解していいかわからないくらい高いビルが自分を囲んでいました。あまりにも私にとっては非現実的な高さなものだから、絵本の世界にあるような、ビル自体が生き物のように見えてきてしまって、ちょっとプロセスできていませんでした。かと思うと、建物のそれぞれが画像のような彫刻が施されてたりとかもして、いちいち立ち止まってしまいました。
カーネギーホールなど、音楽に由来のあるところを歩きながら、リンカンセンターに向かうと、ちょうど卒業式の季節なのもあって、おそらくジュリアード音楽院とか、フォーダム大学の卒業生がマントを着て家族と写真をとっている姿が見られました。お腹も空いてきたので、フランクの行きつけだったビストロでお昼をすることに。

私はちょっと疲れるといつもフレンチフライが頭を駆け巡る人なので、メニューを見ながらバーガーよりもフレンチフライがサイドでついているものを選んでいました。それでも、ここのバーガーは絶品で、パティも1インチくらいはあったかしら。ミディアムレアでいただいてとっても美味しかったです。

エネルギーチャージして、バスでメトロポリタン美術館まで向かいました。初めから、今回はお目当てのものを一つだけ見て終わろうと、ライブラリーに特別展示されているマーブルのアーティストの作品を見に行きました。


色使いと巧みな質感の出し方。小さなキャンバスでも広い空間だと錯覚してしまうようなダイナミズム。


色のサンプルだけでも、短冊状に創られていて、アーティストにとってのレシピが詰まっていました。

今回は、この階段は登らずに次回にとっておきます。と、自分に言い聞かせて、向かうはグーゲンハイム。
フランク・ロイド・ライトがデザインしたいつか必ず訪れたかった場所。

カタツムリのような傾斜のある作り。
この開放感と流動性。傾斜をゆっくり降っていくことで別の世界の時間軸を感じながら鑑賞しているような気分になるところでした。
ここでは、シャガールとカンディンスキーの絵を観ることが目的でした。


近くで筆のストローク、色の選び方、時間の捉え方。全ての要素が、シャガールはこちらが連れられていくような感覚に、そしてカンディンスキーはこちらに迫ってくるような感覚になりました。

胸がいっぱいで美術館を後にして、バスを待っていると、なんだかホッとさせてくれるイラストがこちらを向いていました。

バスに揺られながら、乗客の人たちを見回すと、そんなに観光客はいなくて、地元の高齢者のかたが多く乗っていました。その中で目の前にいたお婆さんが持っていたのは、まさに今向かっている食料品店のZABARSのショッピングバッグ!フランクも数年前までは、よくお昼のサンドイッチを買うために歩いていたとか。元々私が今回NYCに行くといったら、親友が「お願いだから、ZABARSに行って!!!」と猛烈ラブコールを受けていたのもあって、行ってきました。


ZABARSの特徴は、各セクションに白衣のエキスパートがいて、それぞれのスペシャリテを巡りながらお買い物ができる古き良き時代のスタイルを残しているところ。2階に上がると、料理人の主人がもしいたら仰天するのではと思うくらいの素晴らしいキッチンツールが所狭しと置いてありました。親友があれだけ推していたのも納得でした。多分、私もしZABARSフリークの彼女とここに来たら、「フランク、悪いけれど、ちょっと(最低)2時間ほどいいかしら」と待たせてしまったかもしれないと思いました。なので今回は、片目でチラ見することに徹して、でも美味しそうなお茶やペストリーを買って帰りました。

ZABARSの近くには、ロシアの作曲家ラフマニノフが晩年過ごした居住区があり、周りも閑静でとても静かな場所でした。あの曲も最後この場所で作曲したのかしら。。と想いを馳せました。

気がつくと、快晴の空はもう夕方になっていました。グランドセントラル駅にも近づいてきたところで、軽く早めのご飯を食べてお家に帰ろうかということになり、フレンチビストロでヘルシーなサラダと温かいスープをいただきました。

向かうはメトロノースのプラットフォーム。

私たち、どれだけ歩いたのかしらと万歩計をチェックすると、なんと9マイル(約15キロ)!フランクも流石に、「NYCとはいえ、よく歩いたね」と思わず顔を見合わせて笑っていました。
またいつか、必ず訪れたいと思うNYCでした。
つづく